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津地方裁判所 昭和31年(行)3号 判決 1956年8月31日

原告 中村達一

被告 三重県知事

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、被告が別紙目録記載の土地につき昭和三十一年一月六日附第二三四号を以つてなしたる仮換地指定通知は無効なることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、

その請求の原因として、

一、原告は別紙目録記載の土地(以下本件土地と略称する)の所有者であるが、特別都市計画事業桑名復興土地区劃整理施行者である被告は、国道一号線幅員三十メートル西桑名小貝須線幅員二十二メートル拡張の必要上、本件土地に対し昭和二十八年十一月三十日付で、七の四ブロツク一番五十四坪の換地予定地指定処分をなし、次いで昭和三十一年一月六日附第二三四号を以つて右換地予定地指定処分をIIの五十七ブロツク六番五十三坪に変更する旨の通知をなした。

二、而して右変更処分は既に昭和二十八年十二月二十六日に決定されていたのであるから、その変更通知処分は当時の施行法である特別都市計劃法によりこれをなすべきものと信ずるも、仮りに右変更処分通知のなされたる当時の施行法である土地区劃整理法によつてこれをなすべきものとするも、同法第九十八条第四項によれば、仮換地の指定は、仮換地の位置、地積及び仮換地指定の効力発生の日を通知することになつており、これが仮換地指定通知の要件になつている。然るに被告のなした変更指定通知書には単にブロツク番号と地積の記載があるのみで位置の記載がなかつた。位置を示すためには地番を示すのみでは不十分であつて、これを明らかに示す図面を添付すべきものと信ずる。蓋し図面を添付しなければ被通知人は、仮換地指定された土地が何通りの何処にあり、間口何間、奥行何間の土地であるかを知ることができないからである。従つて図面を添付しなかつた本件仮換地変更通知処分は無効であるから、これが確認を求めるため本訴請求に及んだ、と陳述した。

被告指定代理人は、本案前の申立として、本件訴を却下するとの判決を求め、その理由として、原告は訴願及び裁決を経ずして本訴を提起したから、本訴は行政事件訴訟特例法第二条に違反し不適法であると述べ、

本案につき、原告の請求を棄却する、との判決を求め、答弁として、原告主張事実はすべてこれを認めるも、土地区劃整理法第九十八条第四項は、仮換地指定通知書に図面を添付すべきことを規定していない。従つて右通知書に図面を添付しなくても何等違法ではない、と述べた。

(立証省略)

理由

被告指定代理人は、本訴は訴願及び裁決を経ずして提起された訴であるから、行政事件訴訟特例法第二条に違反し不適法であると主張するが、本訴は行政処分の無効確認訴訟であつて、行政処分の取消、変更を求める抗告訴訟でないことは原告の主張によつて明らかである。然らば本訴については行政事件訴訟特例法第二条の適用がないから、被告の右主張は理由がない。

原告がその主張のごとき土地を所有し、被告が右土地に対し土地区画整理法第九十八条第四項に基き原告主張のごとき仮換地変更通知をなしたこと、右通知書にはブロツク番号と符号並びに地積を記載したのみにて、図面を添付しなかつたことは、いずれも本件当事者間に争いがない。

よつて右仮換地変更通知が適法なりや否やについて案ずるに、土地区画整理法第九十八条第四項(原告は右仮換地変更通知に土地区画整理法を適用することにつき疑問を有するようであるが、本件仮換地変更通知については土地区画整理法施行法第五条第六条により土地区画整理法第九十八条第四項を適用すべきである)は、仮換地指定通知には、その仮換地の位置を示して通知することを要する旨規定しているが、その位置を示すについて図面を用うべきことは規定していない。従つて右通知に図面を添付しなくても、通知書自体によつて仮換地の位置が客観的に特定されているならば、右通知は違法ではないというべきである。然らば被告が土地区画整理事業のブロツク番号及び符合を示してこれを通知している以上、仮換地の位置は客観的には特定されているものというべきである。ただ当該土地区画整理事業にたずさわつている係員以外の者は、ブロツク番号及び符号を示されたのみでは、具体的に何町の何処にある如何なる形状の土地であるかを知り得ない場合もあるから、図面を添付せずして為した通知は、通知行為としては必ずしも妥当であるとは云えないが、然しそれは妥当性の問題であつて、有効、無効の問題ではない。又仮りに原告が主張するように図面を添付しなかつたことが通知行為として違法であるとしても、その瑕疵は重大であるとは云えないから、当然無効の事由には該当しない。

よつて右通知行為が当然無効である旨の原告の主張は理由がないから、右通知行為の無効確認を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用したうえ主文のとおり判決する。

(裁判官 松本重美 西川豊長 喜多佐久次)

(別紙省略)

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